この記事は2017年6月に作成されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている場合があります。- 6月7日(水)24:00〜オンエアの内容に基づいた記事です。
- 6月14日(水)24:00〜再放送いたします。
大阪府の長居公園はとっても広くて、サッカーの試合やアーティストのライブなど色んなイベントが開催されています。
公園内には一周2.8キロの外周道路があり、ご近所の方だけでなく遠方からもウォーキング、ジョギング、ランニングを楽しみに来られる方々がいます。
今回のゲスト・マイノリティさんは、
長居公園で視覚障害者マラソンの練習会を開催している「長居わーわーず」さんから、
ブラインドランナーの松本義和さん(写真:中央)と、伴走者(ガイドランナー)の山本喜代美さん(写真:左)にお話を伺いました。
55歳でフルマラソンに初出場!そして翌年の大阪マラソンでは初フル伴走!
フルマラソンとハーフマラソンあわせて数多く伴走されています。
目次
視覚障害者マラソンとは?
視覚障害をもつ方々の中にも、健康維持や体力づくり、趣味のスポーツ、本格的なマラソン競技や大会出場、さらにはパラリンピックなど、様々な目的で、様々なスポーツに挑戦されている方が全国にたくさんいらっしゃいます。
その中で、マラソン大会やウルトラマラソン、ジョギング、ランニングなど、走ることがメインのスポーツが「視覚障害者マラソン」と呼ばれています。
「伴走者」と呼ばれるガイドランナーのサポートを受けつつ、ともに風を感じながら走ることができるスポーツです。
「一方向のみのボランティア」ではなく、2人で走ることでお互いに相乗効果が得られるものでもあるんですよ。
ブラインドランナーとは?
ブラインドランナーの定義(見え方の基準)は様々で、見え方はいろいろ。
- まあまあ見える
- 光は見える
- 少し見える
- 全体がぼやける
- 全く見えない
などなど。
「視覚(視力)障害をもっていて、視覚障害者マラソンを走る人」を総称してブラインドランナーと呼ぶそうですが、視覚だけではなく聴覚にも障害をもつ「盲ろう者」のブラインドランナーもいらっしゃるそうです。
見え方によっては一人でも走れる人や、一人では外出が困難な人がいます。
長居わーわーずの練習会に参加されているブラインドランナーは、おもに「一人では走る・歩くことが難しい人」が多いとのこと。
かなりご高齢のブラインドランナーもいらっしゃるそうですよ。
マラソンって年齢関係なく、生涯スポーツなんですね。
- 松本義和さんってどんな人?
松本さんは全盲のブラインドランナー。
1999年4月、長居わーわーず結成時からのメンバーで、今では一番古株のブラインドランナーだそうです。
それだけ長く続けられるのも、マラソンの魅力のひとつなんですね。
高校1年生の時に緑内障を発症。
子供の頃から野球やサッカー、テニスなど色んなスポーツをやってきた運動好きの少年でしたが、緑内障を発症したことで激しい運動を禁止されてしまいました。
約4年間、大好きなスポーツを我慢するなか、20歳で失明。
「見えなくなったんだから、もう関係ない!」と、再びスポーツをすることに。
ずっと体を動かしたくて仕方がなかったそうです。
1983年に大阪府立盲学校に入学してから、まわりの勧めもあり柔道を始めました。
その後は、
シドニーパラリンピック柔道100キロ級の銅メダル、
アテネパラリンピックでは日本選手団旗手を務めるなど、たくさんの輝かしい戦歴を残されています。
-
現在は、
- 大阪府視覚障害者柔道連盟会長
- 長居障害者スポーツセンター柔道部会長
などもされており、指導にもあたっています。
走ることも大好きで、柔道とマラソンの両方を長年やってこられました。
失明してから間もなく、マラソン大会にも出場なさっています。
ちなみに柔道家は基本的に走ることが嫌いだそうですよ〜。
体が大きい人はその分体も重くなり、体を動かすことが大変になってくるのでしょうか?
確かに大柄な人が走っているのはあまり見かけないような?
松本さんのようにマラソンもやっている柔道家(しかも重量級)は非常に珍しいとのこと。
さらにウルトラマラソンを2回も完走されているんです!
ウルトラマラソンとは42.195kmを超える道のりを走るマラソンのことである。一般のマラソンのように一定の距離を走るタイプと、一定の時間を走り続けるタイプ(その時間内に走った距離が最も長い者が優勝となる)がある。
100kmや24時間走は世界的に行われており(中略)他にも長いものでは6日間レースやアメリカ大陸横断4,600kmまである。
日本のウルトラランナーも21世紀初頭では世界でも有数な存在で、100キロ・ロードでは男女ともに世界記録を保持している。(Wikipedia)
2000年 シドニーパラリンピック 柔道100キロ級 銅メダル
2001年 フルマラソン初挑戦完走 4時間17分
2003年 第1回日本ブラインドサッカー選手権大会 優勝
2004年 アテネパラリンピック 柔道100キロ級 出場 選手団旗手を務める。
2006年 フルマラソンで自己新 3時間41分45秒
2009年 柔道四段に昇段
2014年 第6回水都大阪100kmウルトラマラニック完走(13時間48分)
2015年 第30回記念全日本視覚障害者柔道大会 100キロ級 優勝
2017年 第9回水都大阪100kmウルトラマラニック完走(13時間39分)
伴走者(ガイドランナー)とは?
ブラインドランナーが安全に、安心して走れるようにサポートしながら、一緒に走る人のことを伴走者と呼びます。
走る速さよりも、まずはブラインドランナーの安全第一。
事故や転倒、怪我のないように注意しながら、臨機応変に対応します。
その上で、ブラインドランナーのベストタイムを更新できれば、とても喜ばしいことですが、それは速い伴走者に任せておいて(笑)
何となく「伴走者は速く走れる人じゃないと務まらない」という思い込みがありませんか?
それなのに、ものすごく速いイメージをもってしまうのは・・・
やはり大きな大会で入賞するような方の伴走されている、トップアスリートの方々を無意識にイメージしてしまうのではないでしょうか。
山本さんも、伴走を始める前は「伴走者=速い人」と思っていた一人です。
長居公園で、何やら視覚障害者の方々が走っている練習会があるということは知っていたのですが、まさかご自身が伴走で参加することになるとは思っていませんでした。
ブラインドランナー、伴走者あわせて100人近く練習会に参加されることもあるそうなので、かなり目立ちますよね〜。
そんな山本さんが練習会に参加するきっかけとなったのは、
「手話」と、手話を通じて知り合った「盲ろう者」の方。
山本さんは長い間、地元で手話の活動をされていて、7年前に手話や盲ろう者の方々に関連するイベントで知り合った盲ろう者の方が、たまたま長居わーわーずのメンバーで。
その方から、「伴走者は速い人だけというのは間違い」ということを教えていただき、是非マラソン練習会に参加してみてくださいと誘われ…
そして一ヶ月後には山本さんも長居わーわーずに入会していたという・・・すばらしい行動力!
その関係で今でも盲ろう者の伴走をすることが多いそうです。
当時はお仕事がシフト勤務のため練習会に参加できる機会が少なかったのですが、土日が休みの部署に異動となってからはがっつりと練習会に参加。
「伴走」をひとつのスポーツとして考えるならば、働きながらでも十分継続していけるスポーツなんですよ。
- 山本喜代美さんってどんな人?
もともと中高とバレーボール、大学でスキーなど色々なスポーツをされてきましたが、本格的にマラソンを始めたのは50歳を過ぎてから。
趣味はスポーツだけでなく、ミュージカルや劇の鑑賞なども。
2011年11月 長居わーわーずに初参加。
2011年 那覇マラソン出場(これが初フルマラソンで54歳の時)
2012年 大阪マラソン出場(初のフル伴走)
伴走回数:
フルマラソン:8回
ハーフマラソン:3回
その他:30km走、10km以下も何度かあり。
ブラインドランナーと伴走者はどんなふうに走るの?
基本的にお互い横に並んで走りますが、どちらが右か左かを走るのは、ブラインドランナーが伴走ロープを右手に持つか左手に持つかによって決まります。
伴走ロープの長さは公式では長さ1メートル、輪っかにするので半径50センチくらいと決まっているそうなので、お互いの体が触れないくらいの距離で走りますが、
一人で歩くことが怖い、一人で外に出ることが怖いと感じておられる人もいます。
その人にあわせて肩が触れ合うくらいの距離感で走ったり、練習で公園外を走るときや狭い道を走るとき、大会で人が大勢いて混雑している時など、その時の臨機応変でくっついたり離れたり。
お互いに伴走ロープを片手に握った状態で、お互い手を振りながら走ります。
伴走者が伴走ロープを持つ手を振らないとブラインドランナーも手が振れないので、普段通りに手を振っていいんですね。
また、伴走ロープを離してしまわないように、しっかり手に握って、手を振って走ります。
「目に見える絆」ですね。
手を振って走れる距離も必要です。
離れすぎると手を引っぱられてちゃんと手を振れないですもんね。
運動会やっていた二人三脚の感じで走るといいそうです。
二人三脚といえば、パラリンピックに出場するような伴走ペアは、それこそ二人三脚の逆バージョンのように二人の手と足がきれいに揃って走るんですって!!
そこまで出来ないと速く走れないという世界ですよ。。
ブラインドランナーの走りやすさと安全第一で、不安にならないように注意して走ることが大事です。
給水所がある側を伴走者が走るのも、良いのではないでしょうか。
ブラインドランナー自身が経験上、スタートの時は伴走ロープを短く持ったりと色々工夫をされています。
スタート時は短めに。危ない時は短めに。などなど。
伴走ロープとは?伴走に必要な物は?
伴走に必要なものは伴走ロープのみです。
他に必要な道具はありません。
そして、伴走ロープは非売品です。
非売品というか、皆さん自作しているそうです。
通常はブラインドランナーが自分で使うものを作っているようですよ。
なので見た目や色や材質、固さ、柔らかさもそれぞれ好みで違ってきます。
走っている途中で切れたら危険なので、丈夫で持ちやすい、手触りのよいものが良さそうです。
三色の靴紐をカラフルに三つ編みにして使っている人もいますよ。
伴走ロープは、1メートルくらいのものを結んで輪にして使います。
伴走の際にロープを持って走ることを意外に思う方も多いようですね。
柔らかい?ふにゃふにゃしている?から危ないのではと感じるようで。
かといって、堅い棒のようなものを持って何キロも手を振って走るのは無理なのでは?とマラソン素人の私は思いましたが。。
昔は伴走ロープというものはなかったみたいです。
遥か昔に、伴走者の肩に手を置いて走る伴走ペアをテレビか写真で観たような記憶はありますが。。
視覚障害者マラソンというものがあまり浸透していなくて、あの人たちは何故くっついて走っているのか?
と言われたりもあったそう。
傍目にわからないと事故やトラブルの原因にもなりかねません。
練習中に通りすがりの自転車に乗ったおじいさんが、「ランナーが避けるだろう」と思い込んでぶつかってしまったり。
伴走には2人分の幅が必要なので、混雑しているからといって一列に並んで走ることは困難です。
長居公園は日によってはコンサートやサッカーで大変混雑していますからね。。
長居わーわーずでは、伴走ロープ以外にも一目でわかるようにオリジナルの伴走ビブスも利用されています。
「視覚障害ビブス」と「盲ろうビブス」もあります。
マラソン未経験でも伴走者になれる?
長居わーわーずではマラソン未経験・初心者でも大歓迎。
時々、練習会を見かけて飛び入りで伴走に参加してくれる人もいるくらい、誰にでもできるものだそうです。
いきなりパラリンピックに出場するようなブラインドランナーとペアにすることはないそうなので、安心してください(笑)
伴走することによって、自己ベストタイムを更新していく人もいるので、自分自身にも結果が返ってくると嬉しいですね。
中には自分のベストタイムが伴走時のタイムだという人もいるとか。
伴走者以外にも練習会にはお手伝いで参加してくださっている方々がいます。
エイドという給水所を設置していただいたり、伴走はできないけどお手伝いなら…という方も大歓迎です。
お手伝いから入って、今や伴走者になった人もいるそうですよ。
ブラインドウォーカーとガイドウォーカー(伴歩者)
まず最初にウォークから始められる視覚障害者の方々もたくさんいらっしゃいます。
なのでガイドする方も一緒に歩きます。
つまり、走りは得意でない方や、走れない方でも伴歩することができるんですよ。
普段、白杖を使っていたり手を振って歩けない方も気持ちよく歩いていただけますね。
初めての伴走はどうでしたか?
初めてのハーフマラソン、初めてのフルマラソン、初めてのウルトラマラソンともにそれぞれの思い入れがあります。
すぐに大会というところはさすがアスリートですね〜。
伴走者がいるとはいえ、至るところに集中を張り巡らせるでしょうから、ぐったりと疲れてしまうのがわかります。
同じマラソン大会にたまたま長居わーわーずの伴走者が個人でエントリーされていて、その人がご自分のタイムはそっちのけで一緒に走ってくれたので、何とか完走することができました。
私一人だったらどうなっていただろうか…と今でも思いますが、それもいい思い出です。
個人エントリーの方って目標はやはり自己ベストタイムの更新だと思いますが、仲間愛を感じますね…!
これから伴走を始めてみたい人へ
視覚障害者マラソン練習会 長居わーわーずでは伴走者を随時募集しています。
メンバーが練習会に参加する際に特に予約やキャンセルの手続き等は必要なく、来られる人だけ当日に集合するという、長く気軽に参加できる練習会となっています。
大阪・長居公園内の周回コースで、毎月第2・第4日曜日に練習会を行っています。
朝9時25分に長居の障害者スポーツセンター前に集合して、1周2813メートルの周回コースで走っています。
最寄り駅は、JR長居駅 または、地下鉄御堂筋線 長居駅です。
わきあいあいとした雰囲気のなか、それぞれのペースでランニングを楽しんでいます。
ブラインドランナーは、伴走者のサポートがなければ走ることができません。
ランニングは、日々、少しずつでも、続けていくスポーツです。
それには、1人でも多くのサポートが必要です。
みなさんが、1人で走っていらっしゃる時間の内、少しを私たちと一緒に走って下さいませんか。
ブラインドランナーが、一番求めているのは、大会の伴走者より、実は、普段の練習相手です。
大会で好タイムを出す人も、普段の練習は、ジョグが主となります。
ウォーキングや、スロージョグで、健康づくりが目的の方もおられます。
走る速さより、あなたがジョギングやウォーキングを楽しんでおられるなら、もう、それで十分。難しく考える必要は、ありません。一度、練習会をのぞきにきてください。
視覚障害者マラソン練習会 長居わーわーず
http://waawaas.sakura.ne.jp/
練習会は雨天決行で、当日早朝の大阪市暴風雨警報や台風によりお休みとなる場合があります。
本番のマラソン大会も雨天決行ですものね。。
長居の障害者スポーツセンターは駅前で便利♪
シャワーも完備で快適にマラソン練習できます♪
練習会以外にも、飲み会やバーベキューなどのアクティビティもおこなっております♪
あとがき
マラソン経験がなかったり走るのが苦手な人以外でも「私なんて絶対無理だわ〜」とか「参加しても逆に迷惑かけそう」とか思ってしまうかもしれませんが、
普段のウォーキングやジョギングの延長でばっちりですし、
これからウォーキング、ジョギング、マラソンを始めてみようという方はいっそのこと伴走から始めてみてはいかがでしょうか?
なんと普段の練習会とは別に、伴走講習会というものも開催されるそうなので興味のある方は参加されてみては。
伴走講習会のご案内 (2017大阪南視覚支援学校)
大阪府立大阪南視覚支援学校陸上部と視覚障害者マラソン練習会長居わーわーずとの共催
日時:平成29年7月30日(日) 午前10時から午後4時
場所:大阪府立大阪南視覚支援学校運動場(雨天の場合体育館)、会議室
住所:大阪府大阪市住吉区山之内1-10-12
http://waawaas.sakura.ne.jp/?p=1785
難病で視力を失った道下美里さんが出場されたリオデジャネイロ・パラリンピック 視覚障がい者女子マラソンについての興味深い記事があります。
パラスポーツを盛り上げる人達, フォトニュース — 2016年9月6日
「選手と伴走者の絆を武器に、“チーム”で戦う、視覚障がい者マラソン」
http://www.kanpara.com/?p=4080
今回新たに採用された競技で、道下さんと伴走者2名の「3名チーム」で銀メダルを獲得されました。
伴走者のタイムは公式記録には残りませんが、ブラインドランナーにとっては大切なパートナーであり必要不可欠な存在ですね。
そんな素敵な目標をもつことができるのも、伴走の魅力のひとつですね。
再放送のご案内
上記の内容は、
6月14日(水)24:00〜24:30 に再放送いたします。(木曜深夜0時〜)
次回オンエアの予告
6月後半のゲスト・マイノリティさんは、
内部障害・内臓疾患を示す「ハート・プラスマーク」の普及活動をおこなっている、
特定非営利活動法人ハート・プラスの会 代表の鈴木英司さんに、お話を伺います。
- 放送日は、
- 6月21日(水)24時から(木曜深夜0時〜)
- 6月28日(水)24時から(再放送)
お楽しみに〜。
シドニーパラリンピックの柔道では銅メダルを獲得!
マラソン歴は30年以上というベテランのブラインドランナーです。